法学部に通っていた頃、私は勉強の合間休憩に海外ドラマのアリー my Love(原題:Ally McBeal)を見るのを習慣にしてました。その中で主人公のアリーがセラピストに「テーマソングが必要」とアドバイスされるシーンがあって学生時代はそこに深い意味も見出せずドラマの演出の一つと思って見過ごしていたのですが、社会人になってからはテーマソングの重要性を痛感してます。
外資系のオフィス環境
私が新卒入社した外資系ブランディングエージェンシーは、外資系広告代理店のOgilvy & Matherのジョイントベンチャーだったので、当時はOgilvy & Matherが1フロアを貸し切っていた恵比寿ガーデンプレイスの25階の一角にオフィスがありました。25階は全てWonderwallの片山正道さんがデザインを手がけたモダンラグジュアリーで遊び心たっぷりの最高に格好良いオフィス空間で、部署や会議室ごとにデザインコンセプトが違って会議室にはユニークなネーミングが付けてあって、フリースペースにはミッドセンチュリーのチェアが並んでいてフリーコーヒーが飲めたり、バレンタインにはOgilvyの総務から全社員にジュエル・ロブション(Joël Robuchon)のチョコレートを配られたりと、ザ・外資系の贅沢な環境。その分、私が働いていた会社は「不夜城」とフロア内で呼ばれるくらいに激務でしたが。
中でも私が最も影響を受けたのは、常に音楽が掛かっていたことです。部屋の真ん中にCDプレイヤーがあって、皆んなが好きなCDを持ち寄ってそれぞれが自由に音楽を掛けることができたので、朝から深夜までずっと音楽が掛かってる中で仕事をしていました。私にとって働く環境に音楽があるのがデフォルトで仕事のパフォーマンスが上がるので、独立後もそのプラクティスは継続してます。
働く人に「テーマソング」が有効な理由
冒頭のドラマのシーンにお話しを戻すと、仕事とプライベートに疲弊した弁護士のAllyがシニアパートナーのJohnに勧められたセラピーに行きセラピストのDr. Traceyから「You need a theme song. A theme song something you can play in your head to make you feel better. Theme songs are vital.(テーマソングが必要ね。頭の中で掛けて気分を良くするテーマソング。テーマソングは生命の維持に関わるくらい重要。)」というアドバイスを受けます。
GoogleやFacebookなどのIT系の企業やシリコンバレーのスタートアップ、外資系金融などではマインドフルネスが導入されていてストレス軽減やメンタルヘルスケア、集中力やパフォーマンスの向上など様々な効果が期待できると言われていて私もGoogleのお仕事をさせて頂いた頃からマインドフルネスを実践してますが、個人的にはテーマソングを持つというMusic Therapyもマインドフルネスの一つの形態だと思ってます。
テーマソングの活用法
「テーマソングは必ず1曲のみ」とか「頭の中で掛けること(実際に音楽を掛けるのはNG)」というような厳格なルールは不要。私はシーン別にテーマソングを選んではいますがその日の気分や目的によってプレイリストを変えてますし、頭の中で音楽を掛けるとハミングが出てしまうので、、実際に音楽を掛けるようにしていて出先の場合はイヤフォンで聴いてます。私の活用シーンをご紹介するので、よかったら参考にされてください。
SCENE①「始業」:ホークスの公式球団歌の「いざゆけ若鷹軍団」を掛けてからお仕事を始めてます。福岡市民は小さい頃から日常的にこの歌を聴いて育つので、イントロの数秒で血湧き肉躍るというか、心身が覚醒する感覚になるので、始業の1曲目は「いざゆけ若鷹軍団」にしてます。ちなみに、学生時代はアラームにしてました。
SCENE②「企画書作成」:企画書作成中は、作成のイロハを徹底的に学んだ社会人1年目によく聴いていたCraig Davidの歌をエンドレスで流してます。甘くて切ない歌声、2 stepとR&Bのリズム、自分のルーツや信念を大切にしてるところ、過去の辛い「いじめ」の体験を音楽で昇華させているところなど、そっと心に寄り添ってくれて自分も頑張ろうという気持ちになる曲が多いです。来日された時のSPRINGROOVE 09で聴いた生歌の「7 days」の衝撃は今でも鮮明に覚えてます。
SCENE③「クリエイティブワーク」:ブランディング戦略立案、ブランドブックの制作などクリエイティブワークの時は、スピッツ、リスト、シュトラウスを聴いてます。初めて見た芸能人がスピッツの草野マサムネさんなのですが、高校生の頃に天神から西鉄電車に乗ろうとソラリアに行くとすごい人だかりが出来ていて何事かと覗くとラジオの公開収録をされていたみたいで2階から見てもキラキラと発光されていてすべてが綺麗でした。超絶技巧と独自の世界観の追求、自分のアイデンティティに真摯に向き合う姿勢、異端と優美のバランス、ロマンを感じる音楽がクリエイティブワークの時にぴったり合うと思ってます。
SCENE④「プレゼン時」:1年目からプレゼンを日常的にこなしていてプレゼンが得意というか好きなので、プレゼンだからと言って気負ったりは特にないのですが、ここぞという大事なプレゼンの時は必ずT-SQUAREのTRUTHを聴くようにしてます。F1の曲と言ったほうが伝わるかもしれません。小さい頃にエレクトーンを習っていて一番好きで良く演奏していて今でも演奏できる唯一の曲です。この曲の疾走感が好きなのですが、英語を学び始めた頃にTRUTHという曲名が私の名前と同じだと分かって嬉しく思ったことや、その後自動車メーカーのお仕事をすることが多いことなど、振り返ってみてConnecting the dots /点と点がつながる体験をして運命の曲だと思っているので、ここぞという時には必ず聴くようにしてます。
SCENE⑤「終業時」:新卒時から長時間過重労働が常態化していて仕事のONとOFFの境目が曖昧なのですが、独立してからは更にその傾向が強くなってしまいました。独立して10年目を迎えた頃に、意識してスイッチを切り替えるようにしよう!と決めて毎日の仕事終わりにスピッツのウサギのバイクを聴くようになりました。この曲は塾に通い始める前の自分の世界観に近くて、能古島アイランドパークのウサギと触れ合ったり、鈴虫やカメ、どじょう、金魚、メジロなどのペットのお世話をしたり、シロツメクサで花冠を作ったり、庭のアジサイや桜の木を愛でたり、庭の夏蜜柑や金柑、柿を食べたり、裏山で友達と遊んだりと、自然の中に過ごしていた時の本来の自分の姿に戻るために聴いてます。