オウンドメディアとは、企業が自社でメディアを運営しメッセージを発信していくメディアのこと。2015年頃にブームとなりましたが、リソースの確保やコンテンツのネタ切れ、運営方針などブランディング戦略が欠けていて運営を持続できずに消滅したメディアも少なくありません。オウンドメディアを成功させるのに必要なブランディングについて解説していきます。
公式サイトとオウンドメディアの違い
情報を発信するならTVCMや雑誌広告、新聞広告、屋外広告、WEBメディアなど既存のメディアを活用することも出来ますし、自社が運営する公式サイトもあります。こうした既存メディアを活用する場合はそのメディアの「媒体ルール・お作法」に合わせる必要があり、公式サイトも例外ではなく、「企業や商品・サービス情報の発信」という内在的な縛りが存在します。ですが、オウンドメディアは自社でルールを作ることができるし、公式サイトと違って企業や商品・サービス情報の発信に限らずその周辺部分の情報の発信も目的としているため、オウンドメディアの最大の強みはその自由さにあります。
公式サイトが発信する本題の情報ももちろん大切ですが、オウンドメディアでは本題をもっと噛み砕いだ方法で発信したり本題の周辺部分や本題とは直接的には関係しない情報などを雑談したりすることができるので、よりお客様視点に立ったコミュニケーションの実現やお客様とより深い関係性の構築(ロイヤリティ向上)などに繋げることができます。
オウンドメディアのブランディングはこの特性を理解した上で、実行していくことが重要です。
オウンドメディアに最低限必要なブランディングステップ
①目的を整理:オウンドメディアの目的は、「会社名、サービス・商品の認知度を上げる」「新規顧客獲得」「既存顧客のロイヤリティ向上」「採用力強化」などプロモーション、ブランディング、販促、採用活動に役立てることを目指すものが多いです。一方で、直接的なプロモーションや販促を第一の目的にせずに、「お客様にとって役立つ情報発信」や「イノベーションの啓蒙活動」「蓄積したデータを分析して商品開発やマーケティングに役立てる」ことを主な目的にすることもあります。まず最初に、オウンドメディアを運営することで何を実現したいのかを明確にすることが大切です。
②ビジョンの策定:次に誰に対して何をどのように届けるのか、メディアのビジョンを策定します。メディア立ち上げの志・アイデアをベースに策定しますが、市場分析や競合分析、顧客インサイト分析、自社ブランドの資産分析などの調査結果を踏まえてビジョンを検証することが重要です。ブランド力を高める王道の要素は「一貫性」。ビジョンに沿って、メディアのブランドアイデンティティ、運用方針、コンテンツなどを決めていくことでメディア全体の一貫性が担保されるので、メディアのブランド戦略のコアとも言えるビジョン策定は実際の運用をイメージしながら決めていくようにしましょう。
③ブランドアイデンティティの開発:Step①②を踏まえて、顧客に提供するベネフィット/便益(※機能的、情緒的、自己表現的)、ブランドパーソナリティ(例:信頼できる、刺激的な、エネルギッシュな、など)、ネーミング&ロゴ、などブランド戦略の骨子を言葉とビジュアルで定義していきます。オウンドメディアでは、企業ブランドとのシナジーをどこまで活用するか/オウンドメディアの独自性をどこまで押し出すか(例:オウンドメディアに企業ブランド名を入れる、オウンドメディアに独自ブランド名を開発し同時に企業ブランド名を併記する、オウンドメディアに独自名を開発し企業ブランド名は紐付けない。)の戦略もビジョンとその他のブランドアイデンティティの要素とのバランスを考慮して決定する必要があります。
④運用方針:どのような価値観でメディアを運用していくかを規定するためバリューの策定を行います。更にバリューを実行に移すために、投稿するコンテンツのフォトスタイルやライティングのトーンオブボイス、投稿頻度、品質を維持するための運用チーム体制、など実務上の細かいルール決めも行なっていきます。ここで最も重要なのが、運用チーム体制に経営層のコミットメントを入れることと、企業の経営戦略・ブランド戦略上でのオウンドメディアの位置付けの明確化、関係各所へ協力を仰ぐ際の説明資料の作成も行なっておくこと。オウンドメディアの運営はマーケティング部や広報部が主体となることが多いですが、コンテンツに応じて人事部や開発部など関係各所の協力が必要になり連携をスムーズにするためにこれらの要素は欠かせません。
以上、オウンドメディアのブランディングに最低限必要なブランディングステップをご紹介しました。上級編としては、メディアへの流入施策、ネタ切れにならないコンテンツマーケティングの仕組み化、コミュニティの運営、コアファンの声をオウンドメディアへ反映させる仕組み化などがあります。オウンドメディアに関しては立ち上げ前にしっかりとブランディング戦略を行い、3ヶ月先、半年先、と先を見据えた運用方針を固めることが成功の秘訣です。かなりテクニカルな部分も多いので、自社で全てを行うのではなくプロに協力を依頼することをお勧めします。
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