ずっと移動が多いお仕事をしてきました。一貫してブランド・広告業に携わってきたので必然的にクライアントは東京がメインになりますが、会社員時代も今も不思議なほどに海外や地方の企業様とのお仕事も多いからです。振り返ってみると父も出張が多かったし、教育熱心な母の影響で私はガールスカウトや英会話など小さい頃から海外の文化に触れる機会が多かったので、私が海外や地方のお仕事をすることが多いのは自然なことなのかもしれません。
海外のアダプテーション(日本へのローカライズ)
新卒入社した外資系のブランディングエージェンシーは本社がロンドンで、同じフロアで協働しているグループ会社である外資系広告代理店のOgilvy&Matherの本社はニューヨーク。プレゼン資料の作り方やポートフォリオから大きく違うので、最も吸収力が高い最初の段階で2つの都市の文化の差異を感じながら学べたことはとても幸運だったなと思います。会社員時代に担当した海外ブランドは、ロンドン、西海岸、そして東海岸。初めて東海岸のブランドを担当した直後は、フレンドリーな西海岸とリベラルな東海岸の気質の違いを肌で感じて戸惑ったことを覚えています。戸惑いと言ってもどっちが良いとか悪いとかでは一切無く、「子どもの頃に憧れていたのは西海岸の文化で大人になってからの憧れは東海岸。だから自分の中に西海岸の要素も東海岸の要素もある。」とシンプルに整理できたので自分をもっと成長させようと頑張ることが出来ました。
独立してから担当した海外ブランドは、西海岸、バリ島、台湾、シンガポール、オランダ、ノルウェー、オーストラリア。英語圏以外の国もありますがコミュニケーションは全て英語です。なぜ会社員時代よりも対応エリアが広がったのかは私にも分かりません。ですが、私の友人にメディアにも出てる占い師がいるのですが、西海岸、オランダ、ノルウェー、デンマーク、イタリア、ドイツに非常に強い縁があると言われたことがあります。職業柄守秘義務があるので仲が良い友人とは言っても仕事の話は一切しておらず、なんとなく全体を占ってもらった時の発言だったので縁がある場所には縁があるんだな、大切にしなきゃと思いました。
海外ブランドのアダプテーションのお仕事で、ずっと大切にしてきたのは「そのブランドの本質的な価値への理解」です。ブランドガイドラインやHPに書いてあること、商品・サービスそのもの、PRや広告で発信している内容だけでは不十分。弊社ではもう一歩踏み込んだ分析ができる海外ブランドのアダプテーション用のフレームワークを開発したので徹底的にブランドの属性を掘り下げて行きます。その上で、日本へローカライズする際にそのままにするもの、多少の調律をするものを分けて、戦略立案からクリエイティブ開発、実行まで一貫して対応しています。
地方企業とのコラボ、地方創生
新卒の時に担当していたクライアントの中に徳島県の企業様がありましたが、東京本社でのやり取りだったので地方出張はありませんでした(阿波踊りを見るために旅行へは行ったことあります)。最初に地方出張したのは某エンタメ会社の4大ドームツアーの時。3大ドームはプライベートで行ったことがあったので、北海道へ行けた時はとても興奮しました。広大な自然、春なのに雪がまだ残っていたこと、最初のお通しの段階からジャガイモが従来の概念を覆すほどの美味しさで、さまざまな衝撃を受けました。4大ドームツアーはハードな仕事だったので行く先々で出会った美しい自然と美味しいご飯にすごく救われました。その後、地元福岡のソフトバンクホークスを担当した際は月に何度も福岡出張があり、2月には宮崎キャンプ出張もありましたが、特に初めてのシーズンのキャンプから開幕までの時期は過労死の文字が人生で初めて頭に浮かぶくらいの激務で目の下に痙攣が出たりして、今でも思い出すと胸がぎゅっと苦しくなります。でも、限界を超えて頑張ってきたのは私の誇りです。
独立してから担当した企業様で出張が発生したのは、福岡(久留米)、名古屋、島根、京都、滋賀、山梨です。滋賀へは競走馬のトレーニング・センター(トレセン)へ伺いました。私は動物プロダクションやペットフードブランドなど動物のお仕事も多いのですが、その中でも競走馬はシンパシーを感じるというか特別な存在です。直向きに走る姿は神々しいほどの美しさですが、優しくて強くて賢い競走馬が気力体力の限界まで挑戦し続ける裏にどれだけの努力と苦しさがあったのだろうと、その光と闇の全部に思いを馳せてしまい胸がいっぱいになります。予想をしたり馬券を買ったりはしませんが、競走馬の名付けをしたり、競走馬(引退競走馬も含めて)のQOLを上げる活動をしたりなど自分ができることを今後していきたいなと思って勉強中です。
地方企業様のブランディング、マーケティング、宣伝広告の支援をしてきた中で、ずっと拘ってきたのは「東京・海外の知見を掛け合わせることで、地方ブランドの潜在的な力を引き出すこと」です。地方自治体や観光業の案件も経験してきた中で年々想いが強くなっていくのは、製造立国である日本の原点に立ち返るべきだということ。観光地の神社仏閣や重要文化財などを造ってこられたのは高い技術力のある宮大工さんであり、観光地のお酒や食品、お菓子などを創ってこられたのは同じく高い技術力のある杜氏さん、職人さんです。日本は自然や動物、人間の創造物にも神様を見出す精神性の高い文化だからこそ、観光立国という表層的なものではなくもっと本質的な「製造立国である日本の原点に立ち返る」ことでしか真の地方創生には繋がらないと私は考えます。