今回は「ブランドの成功の鍵は『一貫性』」の後編です。ブランディングにおける一貫性の法則にはビジネスとコミュニケーションの2軸があり、前編ではビジネスの軸でお話しをしたので後編ではコミュニケーションの軸でお話しをしていきます。この場合のコミュニケーションの定義としては、ブランドの対外的なコミュニケーションのことを指します。
ブランドは広告で作れない
ブランドの対外的なコミュニケーションと聞いて一番に頭に浮かぶのは広告だと思います。私は新卒で外資系ブランディングコンサル会社に入社しましたが、その会社が同じWPPグループの外資系広告代理店Ogilvy&MatherとのJVだったのでOgilvyの研修を受けたりOgilvyと協働したりすることも多くかなり影響を受けていて、私も「ブランドは広告で作れない」という考えです。
というのも、ブランドは下記のスライドが端的に示すように、企業のビジネス活動の全てである360°全方位のタッチポイントで作られるものであって、広告で作られるものではありません。広告を打ってなくてもPR活動をしてなくてもブランド価値が高い企業や商品・サービスはたくさんあります。
ブランドビジュアル・オーディット
弊社ではブランディングプロジェクトの最初のフェーズである調査分析フェーズにおいてブランド戦略立案フェーズの前に、ブランドビジュアル・オーディット(監査)を行います。ブランドビジュアル・オーディットとは、ブランドが360°全方位において一貫性のあるコミュニケーションがなされているかを様々なブランディングの観点から分析すること。「ビジュアル」という言葉がついていることから分かるように、主に分析するのはクリエイティブの視覚的情報ですが、発しているメッセージも分析します。
実際にオーディットを行ってみると、各タッチポイントでのクリエイティブが部分最適になっていて全体的な統一感、一貫性に欠けていることがほとんどです。クリエイティブの部分最適がブランディングに繋がるのは、Googleほどのブランド力があるブランドが戦略的に部分最適を行う場合だけです。(Googleはそもそも、ブランドロゴをGoogle Doodleと言ってダイナミックに変化させており、その遊び心がブランディングに繋がってます。)
この部分最適に陥っている問題には、①そもそもブランドらしさが定義されていない、②ブランドらしさを広告などの制作物作成に従事する担当者や外部の会社に共有するためのブランドガイドラインなどが整備されていない、③各チャネルごとに担当者や外部の会社が違う、④ブランドコミュニケーション全般を司どるブランドマネジメント部署が欠如している、など様々な要因がありその要因を特定してブランディング上の課題を抽出するまでがブランドビジュアル・オーディットの役割です。また、ブランドビジュアル・オーディットはブランドが360°の全方位において一貫性を持ったコミュニケーションを徹底できているか、ブランドマネジメント上の課題は何か、を明らかにするというブランド監査の役割だけではなく、カスタマージャーニーなど別のフレームワークも併用することでマーケティング、PR、広告の課題点を明確にしてより効果的な施策に繋げるということもできます。
一貫性こそがブランディングの一番の成功要素。360°の全方位において一貫性を持ったコミュニケーションを徹底することが重要です。まずは自社のブランディング状況、そしてビジネス改善の監査として、ブランドビジュアル・オーディットから始めることをお勧めします。
お問い合わせ先: