ブランドプロポジションの事例と作り方

ブランディングでは様々なフレームワークを活用してブランドを構築する要素を有機的に定義していきますが、ブランディングの成否を決めると言っても過言ではない「ブランドプロポジション」が欠けている事例が多く見受けられます。強いグローバルブランドにはブランドプロポジションが明確に定められているように、ブランドプロポジションが存在しないブランドはブランドとは呼べません。

ブランドプロポジションとは

プロポジション/propositionの直訳は「提案」です。ブランドプロポジションとは、「そのブランドにしか存在しない/出来ない顧客への提供価値・存在意義」を意味し、バリュープロポジションとほぼ同義です(※ブランドにバリューの意味が内在しているため、弊社ではブランドプロポジションの言葉を使用してます)。別の表現を使うと、顧客がそのブランドを選ぶ理由であり、ブランドが目指すべき姿であり、そのブランドの真髄、原点です。例えば、スターバックスはブランドプロポジションとして、自宅や学校・職場でもない「The Third Place/第三の場所」を掲げており、Louis Vuittonのブランドプロポジションは「トランク、旅」です。

ブランドプロポジションは、ブランドとして「何をするか」を定めるものであり、裏の意味では「何をしないか」を決定するものです。ブランドプロポジションを突き詰めていく過程でその両面を十分に議論することでブランドとしてのエッジが生まれるので、正しいプロセスでブランドプロポジションを決定することが重要です。

ブランドプロポジションの策定ステップ

ブランドプロポジションは、以下の5つのステップで作成していきます。

STEP①調査分析:ブランドプロポジションは、a)シンプルで分かりやすいこと、b)顧客を惹きつける要素があること、c)競合との差別化要素があること、d)従業員が実際の行動に移せる現実性/実現性があること、e)ブランドが目指すべき方向性を示していること、という条件を満たす必要があります。この5つの観点を踏まえて、調査分析を行います。

STEP②理念体系の整理:日系ブランドに有効なブランドプロポジションが欠けている理由の一つに、理念体系が複雑で整理されていないからという日本企業独特の事情があります。経営理念、社是、社員心得、スローガン、行動指針、など従来の理念体系が抽象度が高かったり、独自性が低かったり、重複していたりと実際は機能していない部分も多いため、ブランディング要素と整合させるために整理する必要があります。

STEP③VPの作成:経営層に限らずキーパーソンへのデプスインタビューとブランディングプロジェクトのメンバーを集めてのワークショップで、私がインタビュアー/モデレーターとなり様々な切り口からブランド価値を掘り下げるディスカッションを行います。その後、弊社独自のフレームワーク(brandscope)を活用しながらブランドプロポジションを策定します。

STEP④VP案の検証:ブランドプロポジションは機密性が高い案件のため、クローズドの環境で慎重に、顧客、従業員、経営層による検証を行います。顧客や従業員による受容性の検証を行わずに、経営層の議論だけで検証し、経営トップのリーダーシップで最終的なブランドプロポジションが決定する場合も多いです。

STEP⑤VP展開の仕組み化:ブランドプロポジションは案を決定して終わりではありません。ブランドプロポジションは商品・サービス、店舗、従業員の行動、広告やPRなどのコミュニケーションなどあらゆる企業活動に反映されていなければなりません。ブランドプロポジションを全方位で体現できるように、従業員への教育など各種人事施策、広告やPRなどの各種コミュニケーション施策など、実行への仕組み化まで徹底することが大切です。

NOTE:ブランドプロポジションの策定は、ブランドのローンチ前に行う場合と、リブランディングのプロジェクトで行う場合があります。実際はリブランディング(ブランドの改善)プロジェクトの中で行うことが多いので、上記のSTEPではSTEP②で現状の理念体系の整理を入れてます。

お問い合わせ: