強いブランドを構築するためには、社外向けと社内向けブランディングの2つを有機的に連動させる必要があります。ある調査データで、社外と社内の両方のブランディングを実践した企業の収益性が、社外向けブランディングのみの企業や社内向けブランディングだけの企業、ブランディングに対して懐疑的な企業と比較して、有意に高かったということが明らかになってます。強いブランドを構築するには、まずは社内から始めること。ブランドの社内浸透について解説していきたいと思います。
社内向けブランディングのメリット
社内向けブランディング(インターナルブランディング)の最終的なゴールは、社員がMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を理解し、更に、MVVに即した行動を取れるようになることです。社内向けブランディングを正しく実践できると、以下の通り3つのメリットが生まれます。
【メリット①】正しい社内向けブランディングは社員に対して明確な方向性を提示するため、業務遂行にあたって無駄に時間や労力を消費することなくスムーズに意思決定し自信をもって行動に移せるようになります。また、ブランドに「相応しくない」企業活動を社内で適切にスクリーニングすることができるので、自らブランドを毀損させるリスクを減らすことができます。
【メリット②】社内向けブランディングが正しく機能していると、社員は業務上の意義を感じて、仕事に対する満足感や当事者意識、意欲が向上するため生産性の向上にもつながります。更に、社員が共通認識を正しく持てるようになるので、チームワークやコラボレーションなどが活性化し、イノベーションを実現できます。
【メリット③】正しい社内向けブランディングが活性化することによって、あらゆる戦略と企業活動の基盤である企業文化が醸成されます。製品やサービスは競合に真似されたとしても企業文化は唯一無二であるため競合に真似されず耐久性もあり、強い競争上のエッジと顧客基盤を持続的にもたらしてくれます。
企業が抱えるブランディング上の課題
下のスライドは、弊社調査による「企業が抱えているブランディングの課題」のTOP5です。第1位は圧倒的に「ブランドの社内浸透・定着ができていない」で、多くの企業の実態として社内向けブランディング施策に課題があることが分かります。
社内ブランド浸透の課題解決の方向性
企業でブランドの社内浸透・定着ができていない理由には、大きく分けて以下の3つの問題点が挙げられます。
【問題点①:MVVをはじめ、その他のブランド体系が整備されていない】壮大すぎて実現性が低い、独自性が無い、不明瞭で分かりにくいなどMVVの内容自体に問題がある場合も少なくありません。また、MVVやその他のブランディング要素に矛盾があったり優先順位が不明瞭だったりすることも多いです。この場合は、内容そのものの精査と、ブランド体系の整備が必要です。
【問題点②:ブランド浸透の手法が不十分】ブランドの社内浸透を実現させるには、社員が通るべき①ブランドを学ぶフェーズ、②ブランドを理解するフェーズ、③ブランドを体現するフェーズの合計3つのフェーズがあります。また、ブランド浸透の手法には、ブランドブック、カルチャーデック、ブランドエンゲージメント研修、ブランドプログラム、ブランドイベントなど様々なツールやコミュニケーション・イベントがあります。大切なのは、各フェーズごとに適切なコンテンツを搭載した適切な手法を取り入れることですが、この緻密なコミュニケーション設計ができていないことがほとんどです。
【問題点③:モチベーションを高める設計がされていない】まず前提として社内向けブランディング施策には経営トップ層のコミットメントが必須で、経営トップ層の支援がなければその取り組みは持続できません。また、社員が「やらされている感覚」を持ってしまうとブランドの社内浸透は進みません。情報を保存・伝達し人の心を動かす強力な手法である「ストーリーテリング」の手法を取り入れたり、評価や報酬、採用ブランディングなどの人事施策も併せて実施したりすることが有効です。