ブランドブックとカルチャーデック

ブランドの浸透施策のツールとして最も多く利用されるのがブランドブックです。ブランドブックとは、関係者に対してブランドのMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)などブランド構成要素を分かりやすく伝え、理解と共感を促すために制作される小冊子のこと。ブランディングを成功させるには欠かせないブランドブックの作り方の概要を事例とともにカルチャーデックとの違いを比較しながらご紹介していきます。

ブランドブック制作の4つのポイント

【POINT①:目的とターゲットオーディエンスを明確に】まずはブランドブック作成の目的と読み手であるターゲットオーディエンスを明確に設定することが大切です。多くのブランドブックは従業員向けですが、例えばブランディング業務に従事する広告代理店や制作会社などの社外関係者も対象に含む場合もありますし、求職者の方々向けに企業文化をより鮮明に伝えるためにブランドブックを制作することもあります。ブランドブック制作によって達成したいことや解決したい課題など、制作の目的と読み手を明確に設定しないと、ブランドブックの構成要素を決めることや各コンテンツを制作することも出来ず、また、印刷なのかpdfのデータなのかなどブランドブックの展開方法も決めることも出来ません。まず最初に要件定義をしっかりと行うことが大切です。

【POINT②:右脳と左脳の両方に訴えかけるコンテンツを開発する】ブランドブックは、ブランドを正しく理解、共感してもらい、行動を促すために作成します。人は右脳で感じ左脳で納得し、納得ができれば行動に移します。そのため、ブランドブックこそ人の右脳と左脳の両方に訴えかけるように作り込まなければなりません。ブランド戦略の各要素の説明やそれぞれの情報の体系化など左脳情報(ロジック)と、写真やデザイン、コピーライティングなど情緒性が高い右脳情報(アート)が緻密に組み合わされてバランスが取れたコンテンツを制作することが重要です。

【POINT③:ストーリーテリングの手法を活用する】情報を伝達し、記憶に定着させ、人をインスパイアするためには、ただ単に事実を提示するのではなく要所要所でストーリーテリングの手法を活用してコミュニケーション設計を行うことが大切です。消費者の購買プロセスのAISASやSIPSなどを活用し、「Attention(注意)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(購買)→ Share(情報共有)」・「Sympathize(共感する)→Identify(確認する)→Participate(参加する)→Share&Spread(共有・拡散する)」などを基にして、自社のビジネスのボトムラインを考慮したブランド浸透プロセスモデルを作成し、各ステップごとに、相応しいメッセージとストーリーテリングの手法を組み合わせたコンテンツを作成していきます。

【POINT④:ブランドらしさを体現する】ブランドブックは、ブランドの世界観を体現したツールでなければなりません。ブランドガイドラインに定められたブランドの表現方法に沿っていなかったり、ブランドブックを受け取った人がそのブランドに対して期待感や感動、誇りや愛着を感じられないような仕上がりだったりと、ただ取り急ぎ作っただけでブランドブックの要件を満たしていない事例も少なくありません。ブランドブックは基本的には社外秘で、ブランドブックを制作するには高い専門性と知見が求められます。外部の専門家に任せつつ、できる限り自社のマネジメント層やブランディング関連部署も関与しながら、協働で作り上げることが大切です。

カルチャーデックとの比較

最近はブランドブックではなくカルチャーデックの作成依頼も増えてきました。両者の違いを聞かれることも多いのですが、基本的には両者は同じ「関係者にMVVなどのブランド構成要素を分かりやすく伝え、理解と共感を促すために制作されるツール」を意味します。ですが、ブランドブックが「印刷して関係者に展開される『小冊子』」と定義される一方で、カルチャーデックは「データで展開される『スライド』」と定義される、ブランドブックが五感を満たす作り込みのものが多くカルチャーデックはミニマルデザインのものが多いという違いはあります。ブランドブックも最近はデータで展開されることも増えてくるなど両者の差は縮まってきてはいるのですが、基本的には「オーセンティックなブランドガイドライン」と「最旬なカルチャーデック」というテイストの違いはまだ残っているので、どちらで制作するべきか、または折衷案にするべきかは、クライアントの課題などに応じて適宜最適解をご提案してます。

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