早稲田には大学図書館としては日本で最大規模の規模を誇る中央図書館があり、その他にも学部ごとに学生読書室と呼ばれる図書館があって、本好きの私はそれらを使い分けながら日常的に通っていたのですが、大学4年生の時に出会った「ブランディング360°思考」という本でキャリア上の運命が変わりました。
Ogilvy Japanへコンタクト
当時私は大学4年生で不本意な形だったけど就活も終わり卒業の目処もついたので、社会人になった時に役立つようにと実務的な本を色々と読んで勉強している時期でした。早稲田の学生読書室は学部ごとに特色があって、政経の学生読書室はその頃見学に行かせてもらった法律事務所のライブラリーのようにスタイリッシュな空間がとても魅力的で、商学部は教室のような小さな空間なのに置いてある本がどれも一癖あって面白く、私は法学部の学生読書室よりもその2つによく通っていて、「ブランディング360°思考」に出会ったのは商学部の学生読書室でした。
読んだ時にその内容の仕事をしている自分が鮮やかにイメージできて、居ても立ってもいられず就活を終えた学生特有の勢いのままOgilvy Japanへ電話して人事の女性に採用活動をしてますかと聞くと「英語はできますか?」と。「はい。」と答えるとそのまま人事のKさんにお電話が代わり、とにかく夢中で「早稲田の法学部を今春に卒業します。御社の仕事に興味があります。法学部がなぜ広告代理店にと思われるかもしれませんが、ロジックを緻密に重ねていき最後に感性をプラスして課題解決に至るという法学のアプローチは広告代理店のそれと共通のものがあるので、私は御社に貢献できると思います。」と英語でお話しすると、「新卒採用はしていないけど、6月にグループ会社で空きが出る。6月入社でも大丈夫?」と聞かれたので、「問題ありません!」とそのまますぐに面談のアポ取りのためにKさんのメアドを聞いて英語の履歴書と職務経歴書/レジュメを送付しました。
内定辞退
面談まで日数があったので、私はOgilvyの勉強を進めるために新宿の紀伊國屋で「ある広告人の告白」と「Ogilvy on Advertising」を購入し読み終えるとすぐに、まだ面談もしていない時点でもうOgilvyで働くことで頭がいっぱいに。「内定を辞退しなくては」と、就職氷河期で内定を頂くまでとんでもない苦労をしたのに、私は内定辞退を伝えるべくお電話を入れてすぐに本社へ謝罪へ伺いました。その後も人事部からは何度も説得されましたが、私はとにかく謝罪して最終的にはご理解を頂くことができました。後日談ですが、4月に入ってオフサイトで行われていた新入社員向け研修期間中にその研修先から社長が実家に「楽しみにしていたのに」とお電話をくださっていたとのことで、改めて事の重大さを理解しご迷惑をかけてしまったことを大変申し訳なく思いました。
ですが、新卒切符を捨てて東証一部の企業の内定を辞退してまでも、私はどうしてもOgilvyで仕事をしたかったし、今振り返ってみても最初のキャリアをOgilvyでスタートできたのはとても幸運なことだったと思います。広告業界で働くための矜持から始まって、広告代理店の営業(Account Executive)とクリエイティブ業務のスキル、多様性のある文化など基本から応用編まで幅広い学びを得ることができました。
広告人のバイブル「Ogilvy on Advertising」
広告の父と言われるDavid Ogilvyが書いた「Ogilvy on Advertising」には、広告業界で働くためには、売れる広告を作るには、効果的な調査分析をするにはなど広告業界で成果を出すために必要な情報が揃っていて、広告の基本的な考え方からテクニック、そしてマインドセットを学びました。実際の広告事例も掲載されるのですが、Ogilvyの広告は時が経っても全く古臭く感じないのが凄いです。何度繰り返し読んでも読むたびに新しい発見があり、原点に帰ることができる大切な一冊です。「良い広告代理店の見分け方」や広告業界の仕事の進め方も書いてあるので、広告業界で働いている方に限らず、クライアント(事業会社)側で広告代理店と協働される方にもおすすめです。