2024年5月に立ち上げたこのオウンドメディアも、記事を投稿していくうちに無理なく継続できることが大切ということで週1回の更新頻度で落ち着きました。今年の投稿は今回を入れて残り4回。今回は2024年に読んだ本のレビューや例年よりも多かった展示会周りの仕事のまとめを投稿しようかなと考えてましたが、師走感が出てきたり悲しいニュースが多かったりでメンタルが落ちている人が多いように感じ、メンタルヘルスケアについて書きたいと思います。
メンタルヘルスケアの位置付け
一口にメンタルヘルスケアと言っても、対象者や抱える課題によって対処法は異なります。そのため本記事では私が独立以来ずっと探究してきた「起業家のためのメンタルヘルスケア」という文脈に絞りたいと思います。便宜上「起業家」としましたが、その定義はもっと広いです。会社であれ事業・プロジェクトであれ、何らかを0から立ち上げて奮闘中の人のことを意図してます。起業家にとってメンタルヘルスケアは大事なビジネススキルのスキル。ですが、メンタルヘルスの問題を語るのはタブーという空気感がまだ残っているのも事実です。今後はもっとオープンに議論できる世の中になることを期待しつつ、敢えて起業家にとって逃れることのできないメンタルヘルスの問題とその対処法について語ってみようと思います。
自分の生い立ちと育んできた性格を愛すること
起業家には組織・集団の中で浮いてしまい自身のアイデンティティに悩んで苦しい経験をした人が多いように感じます。私自身の経験で言うと、学生時代には無かったのですが、会社員だった頃に何もしていないのに一方的に攻撃されて勝手に修羅場に巻き込まれたことが多々あります。社会人なりたての頃、会社の煙草部屋に集う人たちが私のことを陰で「お嬢」と呼んで悪口を言っていることを先輩が教えてくれて、陰口を言う人に対しても陰口を運んでくる人に対しても強い生理的嫌悪感を感じました。その後、仕事を覚えていくにつれて足を引っ張る人の言動の酷さは増していきました。私は自分から人を攻撃したりしないので、理由もなく一方的に、陰に陽に人を攻撃して陥れようとする人たちのことが全く理解できなかった。
起業家の人の多くは、実家が会社経営していたり特殊な教育を受けることができたりとその生育環境から違うため、そもそも会社とか組織に依存するマインドセットや人様に対してとやかく言うマインドセットが育っていないんです。組織の中で生き抜くには上の人に媚びへつらったり脅威となりそうな人を蹴落としたりしないといけないのかもしれません。でも、多くの起業家は生まれつきのサラリーマンじゃないからそういう発想すら皆無でそういう言動ができないしそういうことを平気で出来る人たちを理解できない。だから苦しんできたんだと思いますが、まずは日本において起業家はマイノリティであるという事実を受け入れつつ、起業家は良い意味でも悪い意味でも純粋培養されて「自分で切り拓くしかない」という主役根性の教育を受けてきたのだから、自分の生育環境に感謝してその環境下で育んできた自身の性格をそのまま愛すると楽になると思います。
友人と起業すること
起業して上手くいっている事例は、学生時代の友人と一緒に始めたということが多いです。但し、在学中に起業もしくは卒業したての起業で家庭教師派遣や塾運営など学生の特権を使っただけの「コモディティ起業」は中長期的な成功を収めないので成功とは定義しません。起業して成功するためには確かな専門性と独自性、プロフェッショナリズムが必要なことは大前提です。それらが揃った上で、学生時代の友人と一緒に始めた事例は確実に成功を収めています。
起業を成功させるためには、①良いチームを作り生産性を上げることができる優れた企業文化(コーポレートカルチャー)の構築、そして②創業のきっかけとなったイノベーションを持続させること、の2点が重要なのですが、それは学生時代からの友人と起業すると叶いやすいからです。さらに、透明性の高いオープンなコミュニケーションが出来るので起業家のメンタルヘルスの向上/メンタルヘルスの悪化防止にもつながります。
学生時代の友人と起業しなかった/出来ない場合は、今からでも遅くないので、良い友人になれそうだと感じることができる人と一緒に仕事をすることに拘りましょう。繰り返しになりますが、大切なのは企業文化の構築。そのために価値観が合う人に徹底的にこだわること。才能だけで仕事相手を選ぶのではなく、自分のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を共有できる人を選ぶこと。超優秀なAクラス人材ほど「価値観が合う人と一緒に働きたい」「才能に溢れ刺激し合える人と一緒に働きたい」「余計なことで消耗したくない」と考えているので、才能と企業文化のバランスを見て環境づくりを行うことは生産性やメンタルヘルス向上の観点から非常に重要です。
自分を救ってくれる言葉を探すこと
海外在住の私の友人は「起業家はアスリートみたいなものだから、心身鍛えておかないといけない」と言ってました。全く同感です。さらに言うと、アスリートと同様に起業家にも優れたコーチが必要なのではないかと私は思います。実際、海外のテック企業のCEOには優れたビジネスコーチがいます。起業家は孤独やプレッシャーと闘いながら自分の責任で判断を下していかないといけないタフな仕事です。日常的に心身を鍛えるなら食事やマインドフルネス、筋トレ、散歩、読書、そしてビジネススキルを高めるなら、本業の仕事を全身全霊で取り組むことで解決しますし、ちょっとした悩みなら友人や先輩に話を聞いてもらって一緒に美味しいものを食べたりすれば解決します。でも、本当の深いところの事業や自身に関する問題は誰にも話せずに一人で抱え込んでいるという起業家が多いように思います。
私が初めてコーチングを受けたのは外資系企業に新卒で入った直後です。海外のビジネスコーチでキャリアビジョンなどを一緒に作成しました。金額は忘れてしまったのですが当時の自分の感覚でちょっと高いなと思ってしまったので結局1レッスンで終了してしまいました。ですが、そのレッスンのことは今でも鮮明に覚えていてその時に作成したキャリアビジョンなどはその10年後に全て叶いました。海外のビジネスコーチングを再開したのは独立してからです。同時に、英語のビジネス本や日本のビジネス書の読む量を増やし、これまではあまり読むことがなかった純文学や小説なども読むようになりました。結局のところ、起業家の課題を解決するのはPerspective(視点)の切り替えや新たなコンセプトであり、それはコーチングや読書から得られる言葉から生まれるのだと感じたからです。この本質的な気付きは私自身がクライアントにコーチングを行う際にも活かされていますが、もっと日本の起業家にコーチングを含む海外のスタートアップ文化が根付くと良いなと思ってます。