心理的安全性の高い企業文化

心理的安全性(Psychological Safety)とは、「組織やチームの中で誰もが気兼ねなく意見を述べることができる状態」のことを指します。1999年にハーバード・ビジネススクールの教授でリーダーシップ、チーム、組織学習の第一人者であるエイミー・C・エドモンドソン教授によって提唱された概念です。日本で心理的安全性が注目されるようになったのは、Googleが「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」という社内調査の結果を発表した2016年頃。過去にGoogleのアカウントを担当していた経験からGoogle大好き!な私は、それがきっかけで自分の専門であるブランディングの観点から心理的安全性について研究と実験を重ねてきました。

心理的安全性はイノベーションの源泉

不確実で予想が難しい時代を企業が生き抜くために必要なもの、それはイノベーションで競争優位性を確立することです。イノベーションを生み出し続けて持続的な成長を遂げる組織であるためには、優秀な人材を採用することだけでは不十分で、「個人とチームの能力が引き出される企業文化」を構築する必要があります。その生産性が高い企業文化に大きな影響を与える要因こそが、心理的安全性です。イノベーションの創生や生産性向上を企業の最優先課題にしている経営者は多いですが、実際に心理的安全性の高い組織づくりに真剣に取り組んでいる経営者は少ないように思います。

弊社では職場における心理的安全性を、①不安や恐れを感じることなく真善美に沿った言動ができる、②個性を尊重されて自分らしくいられる、③建設的なコミュニケーションができる、心理的に安全な環境のことと定義しています。職場で心理的安全性が構築されていると、間違いが迅速に共有されて改善につながる、一人ひとりが心地良く業務に集中できるので生産性が上がる、部署を超えたナレッジの共有やコラボレーションが可能になりイノベーションにつながるなど、好循環が生まれます。心理的安全性こそが、生産性と創造性、イノベーションの源泉なのです。

イノベーションを生むために必要となる「心理的安全性のある企業文化」は、運任せにして生まれるものではなく戦略的にデザインして自律的に構築していくことが重要です。さらに言うと、その仕組み化を率先して行なっていくのは経営者の使命です。イノベーション促進のために社内公募型新規事業開発プログラムやオープンイノベーション事業の立ち上げなどに取り組んでも肝心のイノベーションが生まれないのは、形だけ取り入れてその本質を見失っているから、手段が目的にすり替えられているからだと思います。

心理的安全性の高い組織の作り方

弊社では「勝てる企業文化の13の条件」や「マネジメント層のルール」「brandscope」など過去事例をもとに独自に開発した手法・フレームワークを活用して、心理的安全性に特化したコーポレートブランディングサービスを提供してます。MVV策定などの企業文化策定、社内コミュニケーション施策、インターナルブランディング(従業員のエンゲージメント向上施策)などを、人事戦略を有機的に繋げることで、迅速かつ的確な意思決定、従業員の心理的安全性の確保、離職率の低下、従業員のエンゲージメント(帰属意識、当事者意識)や生産性の向上、イノベーションの創出などを実現し、企業の持続的成長へと繋げる仕組みを構築してます。

単純に形だけのMVVを作るのであれば誰でも時短で作ることができます。ですが、要件を満たしていなかったり、ブランドや創業者などの真の姿とリンクしていなかったりというように欠陥があることがほとんどで、そのような偽物のMVVは機能せずブランドの構築や心理的安全性が高い企業文化の醸成には繋げることができません。また、MVVは作ったら終わりではなくそれを実践できる仕組みを人事領域まで踏み込んで構築することも重要です。

心理的安全性の高い企業文化策定への想い

一つ前の投稿に私がWieden+Kennedy TokyoでGoogleのアカウント担当になった経緯を書きましたが、Google担当の前に私は電通で過労死ラインを超える長時間荷重労働+パワハラ+セクハラという心理的安全性とは?という環境で、自分の年次以上に責任のある業務に従事してました。普通に考えたら高いパフォーマンスの発揮どころか、病まない方がおかしい状況です。でも私はクライアントからも上司からも認められるくらいに高いパフォーマンスを発揮出来てた。Googleの「生産性の高いチームは心理的安全性が高い」という調査結果を読んだ時、「であれば、当時の私のパフォーマンスは本来ならもっと高められたはず?」と最初に感じました。

その後研究と実験を重ねた結果、当時の私のパフォーマンスは最大値を発揮出来ていた(=環境要因によって本来よりもパフォーマンスが下がったとは言えない)という結論に至りました。というのも、当時2人チームで仕事をしていた部長は早稲田の大先輩だったのですが、お互いに意見をオープンに話あえるような空気感を作ってくれていて、初期の段階から私の性格を的確に見抜いた発言をされて私に自分のやり方で自律性を持って仕事をさせてくれて不必要に干渉しない(※必要な時には必ず関与してくれてました)タイプのマクロマネジメントを実践してくれて、時々「根性がある」とか「良いところの子だから」、「これだけやってるってすごいことだから自信持った方が良いよ」とか褒めてくれていたのでチーム内の心理的安全性は担保されていた環境だったんです。

先に述べたように私個人としては心理的安全性の高い組織づくりは経営者の使命であるというスタンスです。これは大企業であっても中小企業、スタートアップであっても同じです。経営者側から始めるべきことなのでコーポレートブランディングのご依頼を受けた場合は、必ず心理的安全性施策も含めて対応してますが、最近は商品・サービスブランディングのご依頼の場合でもクライアントのチーム内の心理的安全性を高める施策をミニマムで実施するというグラスルーツ活動も行なってます。