私は2005年に早稲田大学法学部を卒業し新卒時に中途枠で外資系ブランディングコンサル会社に入社しました。その後サマンサタバサのプレス(広報)→電通→外資系広告代理店のWieden+Kennedy Tokyo→博報堂→独立というキャリアパスです。独立して今年で13年目になります。長年苦悩してきましたが、更なる被害者が出ませんように、頑張っている人がもっと自由に、公正に、自分らしく生きていけるホワイトな世の中になりますようにという想いを込めて、電通の夜部会事件のことを綴っていきたいと思います。
私のプロフィール等は下記の「100 questions with CEO」の前編と後編に纏めてますので、是非本投稿前にご覧頂ければと思います。http://acebrand-b.com/100questionswithceo1/、http://acebrand-b.com/100questionswithceo2/
以下は全て、夜部会事件の動画、当時の勤務状況を示す電通の社員手帳の記録とメールやパワポなどのデータ、先輩社員の証言データ、法務担当者との電話音声データなど客観的証拠に基づいて記載しています。
電通の夜部会とは
電通の夜部会は、四半期に一度の頻度で飲食店を貸し切って行われる夜の宴会です。次長から幹事が4人ほど任命され、幹事達はまず局長のスケジュールを抑えてからスケジュール決めて上長からチームに周知してもらいます。その後幹事達は座席表を年次などに考慮して作成し、会社から一部支給される費用で足りない金額を役職・年次順に傾斜をかけて(役職・年次が高いほど、費用負担も大きい)徴収。幹事達が披露する出し物は芸能人のダンスを真似るなど身を削った芸を披露するのが主流で、幹事業務は事業の業務であって、電通の縦社会・体育会系の風土が強固に反映された実質的強制参加の飲み会でした。
当時の私の勤務状況
夜部会事件は2009年6月26日の20時から六本木の飲食店を貸し切って行われた12営業局ソフトバンクチームの夜部会において幹事ら4人+私のマーケティングチームの上司1人によって起こりました。当時の私の勤務状況も前提として必要な情報になりますので、少し纏めます。ソフトバンクチームは激務と評される電通の中でも特に激務なため特別に「スーパーフレックス制」が導入されていました。もともと私はマーケティングチームに在籍していて、ソフトバンクモバイルのマーケティングの通常業務に加えて時折発生する英語案件や緊急案件などは一人で対応していましたが、夜部会事件の約3ヶ月前である3月中旬より本格稼働したソフトバンクホークスPJの主幹も兼務するようになってより激務になりました。
月に1、2回の福岡出張をこなし、土日はイベント稼働で14連勤も多く、ソフトバンクモバイルのマーケティング案件と並行してホークスPJの企画、PR、広告、販促業務に従事し、毎日始業から26時頃まで働くという怒涛の日々。夜部会事件の時点で私は入社10ヶ月目にも関わらず、常軌を逸した業務量と仕事の責任、スケジュールで働くという過酷な労働環境で肉体的精神的に高い負荷を抱えており、時間外残業時間は160時間を超えてました。夜部会事件の約1ヶ月前である5月30日には4月分の残業時間の件で産業医との長時間労働面談を受けているくらいに長時間過重労働が常態化していました。更に、夜部会事件の当日はiPhone 3GSの発売日で私を含むチームの主要メンバーは早朝6時半から表参道の旗艦店のイベントに稼働していて(幹事達は稼働していない)、イベント終了後も私は通常業務をこなしつつ英語の報告書も一人で作成して当日中に送るというように、普段よりも激務で満身創痍でした。
夜部会事件の概要
夜部会の幹事は、小薗健志さん、任化為さん、派遣社員の石井雅美さん、IT系グループ会社で常駐していた萩野さんの4人。幹事達はロンドンハーツの格付けの番組をまねて自分達以外の部員を笑いの対象とする「部員アンケート結果発表」を実施。「●●な人ランキング」とお題毎にベスト3を選定し、イントラネットから取得した社員証の写真と名前、ランキングのタイトルとその選定理由を2、3列挙するという形式で編集したパワポをお店の巨大スクリーンに投影しMCである小薗健志さん、任化為さんが同内容をマイクで発表するという趣向でした。
「貯金が多そうな人ランキング」において、2位に当時20代後半だった私が局長や次長、部長3人、その他30〜40代の男性社員達を抜いて選定され、その理由として「パパからお小遣いをもらってそう」「彼氏が辻さんのために貯金してそう」「辻さんは自分のお金を使わなさそう」でした。夜部会にはほぼチーム全員の40名ほどが参加していて、そのうち20代は9人で女性は5人でした。1位に独身貴族の次長が選ばれたのは納得ですが、2位に私が選ばれるのは不合理です。
当時のソフトバンクチームは犬のお父さんのキャラクターを活用したCMなどの広告、販促物を展開しており、チーム内の公用語である「お父さん」ではなく「パパ」を敢えて使用している時点で悪意は明らかですし、そもそもロンハーの格付け自体が悪意を形式化したものです。日常的に「広告などの表現物が受け手にどのように伝わるか」を考慮しながら業務を行う広告業界の1位の電通社員である夜部会幹事達は「大多数が年配男性の集団の宴会で20代後半の女性が『パパからお小遣いをもらってそう』と言われること」がどのように認識されるか、言われた女性がどう思いどう反応するのかを理解したうえで、それらを楽しむ意図で制作されたことは明らかです。
誰もが「パパ」を「愛人」と理解し、それまでのランキングでは笑っていたチームメンバーも一切笑わずシーンとなりました。当時のチームは男性上司が裸踊りをしたり、ICU卒の20代男性が「(就活生が行う)OB訪問は毎年女子大生が供給される素晴らしいシステム」と言ってその女子大生の下着姿の写真を日曜お昼の部長邸でのホームパーティーで周囲に見せて品評会をしたり、平日早朝から前の日に五反田の性的サービス(キャバクラやクラブではないです)に連れ立って行った時の様子を実況したり、、民度が高いとは言えない組織風土であったにも関わらず、夜部会事件発生時、単なるお酒の席の冗談とは捉えず誰も一切笑わずにドン引きしていたことが夜部会事件の真の評価と言えます。※幹事の中で最年長である小薗健志さんは鹿児島のテレビ局から電通に転職されました。アンケート結果はコンテンツとして幹事達によって編集されていることは明らかです。
私の人格と尊厳を傷つける発表に対して私が抗議の声を上げようとしたところ、これを同じマーケティングチームの直属の先輩である秋元健さんが「女にとって名誉なことだよ」と主体的に大声で牽制し、それがきっかけで次のランキングの発表へ移ってしまいました。当時はお酒の一気飲みなどがあると局長などの上長が「コンプライアンス!」と止めてましたが、当時局で使われていた「コンプライアンス!」という指導・牽制は幹事達4人と秋元健さんにはなされませんでした。尚、この時の夜部会には研修を終えたばかりの新入社員達も参加していました。
夜部会事件の問題点
まず第一に、夜部会事件は名誉毀損、肖像権の侵害、パワハラ、セクハラです。幹事達は徒党を組み周到に計画を立てて実行したものですが、その工程で犯行を止める機会は何度もあったはず。故意または過失は十分にありました。名誉毀損は刑法上の犯罪行為でもあります。違法性阻却事由として①事実の公共性、②目的の公益性、③真実性・真実相当性があることが挙げられますが、そもそも私はきちんと躾けられて育ちたくさんの愛情を受けて守られて生きてきたので「愛人」なんて発想すらなく、一緒に仕事していた部長も「良いとこの子。根性がある。みんなホークスPJから逃げたけど辻だけは逃げなかった」と周囲に言ってくれていたので事実無根も甚だしく、また、公共性も公益性も皆無です。
仕事などで年下女性に負けたからと言って、清く正しく真面目に正々堂々と生きて過労死レベルを超えた業務量をこなしてる一人の女性を、暇な人達4人で周到に計画を立てた上で一方的に狙って奇襲攻撃的に、部会という若い女性の立場が圧倒的に弱い縦社会の実質強制参加の飲み会の場で集団の中で事実無根の作り話をぶつけて来るなんて、名誉毀損・セクハラ・パワハラの態様の卑劣さ・卑怯さ・残酷さは言語を絶するものがあり、破廉恥の極みと言える犯行です。電通史上においても日本史上においても前例の無い陰湿・醜悪な常軌を逸した犯行です。上場企業として許されるものでは決してありません。
第二に、仮に夜部会事件がお酒などのCMとしてOAされたら「名誉毀損」「肖像権の侵害」「セクハラ」「パワハラ」「ルッキズム」「女性蔑視」「ブラック企業」「職場のいじめ」と大炎上することは明らかで、広告業界第1位の電通社員としての資質が問われるものだと思います。
何よりも、一般人の感受性を基準にして被害者である私の立場に立った場合、強い嫌悪感や憤りの感情を覚える形の性的侮辱表現は明らかに違法です。そもそも、電通で働いて自分の年次以上の成果を出して自力で稼ぐことができてる女性を「売春(違法行為)をする種類の女性」に仕立て上げることで笑いの対象とするような知性と品性が欠ける行為をする男女がいる上場企業が存在するなんて想定すらしていませんでした。極めて低俗で悪質で気色悪い侮辱行為と感じます。自分達の特異な世界に、無関係の私を引き摺り込むな、とんでもないことをしてくれたなと非常に遺憾に思ってます。
幹事達との関係性
幹事達の最年長である小薗健志さんは1993年に鹿児島大学教育学部を卒業し鹿児島のテレビ局を経て電通入社されたので、事件当時は30代後半で私の10歳以上年上です。前述のホークスPJは夜部会事件の約3ヶ月前である3月中旬に本格稼働しましたが、当初はメンバーだった小薗健志さんは開幕の4月3日前にはフェイドアウトされていたので、ほとんど接点はありませんでした。小薗健志さんは「永遠の高校球児たちへ」を標榜するマスターズ甲子園の委員をされていたので、自分が抜けた野球球団のプロジェクトを年下女性でしかも入社1年未満の私が成功させたのが悔しかったのだと思いますが、それらは自己責任で私のせいにするのは逆恨みです。スポーツマンシップとは。
幹事の中の唯一の女性である石井雅美さん(現在は旧電通テックである電通プロモーションプラス勤務)は当時30代で私より少なくとも3歳ほど年上の派遣社員でしたが、昭和女子短大卒で電通前はどんな仕事をしていたのか定かではありません。初対面で「大学どこ?」と聞かれたり、皆んながいる前で「この顔とビジュアルだと何でも思い通りでしょー」と私のことを品定めしたり、「可愛い服着ちゃって」と座席付近で洋服を引っ張って爪の跡を付けられたりして非常に迷惑していました。常に声が大きく、喫煙者で煙草部屋の人脈もあり、次長や部長と毎晩のように同伴し、ある時には定時になったら私物のゴルフクラブを持って次長と一緒に退社して神宮の打ちっ放しに行き、男性上司の裸踊りを盛り上げたりなど、職場の人間関係などの優位性を背景に、私や私と同窓の若手男性社員などに不適切な言動を繰り返していましたが(後に若手男性社員は退社し、私も退社に至る)、上長達を筆頭に周囲の人たちは石井雅美さんを刺激しないように苦心してました。新しく派遣社員が入社したら男性と混じって年齢当てゲームをして見事当てた男性に「さすが、女の目利き!」と囃し立てるなど上場企業には相応しくない言動を毎日繰り返すので、本当に不愉快で迷惑していました。
幹事の任化為さんとは特に接点ありませんでした。業務上も。「死ね!」とか「くそ!」とか大声で独り言が多かった印象です。
萩野さんはグループ会社のIT系駐在社員で私とはほぼ接点ありませんでしたが、夜部会の直後に後任の高原正訓さんとバトンタッチで退社された際に「たいそうなご活躍で」と言われました。尚、高原正訓さんは五輪組織委員会の一員で、組織委員会が大会開催のために借り上げていたホテルで性的サービスの女性達を呼んで酒盛りした、ゴシップJapanなるスポーツ新聞を模した文書を作成して身内のW不倫を宴会で暴露したと文春が報道してます。幹事である小薗健志さんはWEBチームのリーダーで、任化為さん、萩野さん、高原正訓さんは同じWEBチームなので小薗健志さんの部下にあたります。
私とは同じマーケティングチームの上司である秋元健さんは小薗健志さんと同じ鹿児島にある鶴丸高校の先輩(小薗さん)と後輩(秋元さん)の関係です。途中から私がホークスPJを兼務して激務になったのでさらに接点は減っていきました。秋元健さんは上長と後輩を明確に区分し後輩にはそれなりの対応をされていたので、秋元健さんの上記発言は私のためではなく同じ高校の先輩である小薗健志さんを庇ったものです。
夜部会事件は理不尽なパワハラ、セクハラを誘引することに繋がり、結局ホークスPJを奪われたことで私は電通を退社することに至りました。詳細は次回以降にまた記述しますが、ホークスPJ目線で書いた記事ももしご興味あれば読んで頂ければと思います(http://acebrand-b.com/seattle/)。また、電通の企業風土の抑制などで法務に対して声をあげることができなかったのですが、2021年3月にソフトバンクチームでもお世話になっていたシンガタの佐々木宏さんのオリンピッグ事件がきっかけで法務に対してやっと声をあげることができました。詳細は次回以降にまた記述しますが、法務マネジメント局のGMである稗方一司さんからは「12年前の出来事で突然ご連絡を頂戴し」など夜部会事件が時間軸で解決できる程度のものでないことを認識できていない・夜部会事件を軽視しすぎている無責任な対応をされました。また、秋元健さんの発言に対しても「素敵な女性だからパパが付く(原文ママ)」と擁護されていました。全く意味が分からない。更に、「どなたもご記憶にないとのこと」の一点張りで「事実無根だ」などと潔白をご主張されることは一度もありませんでした。あろうことか、「辻さんの言動に恐怖感・威圧感を感じる」などとまさにDARVO(性加害者が自分の行動への責任追及に対して示す、被害者を攻撃して加害者と被害者の逆転させるというよくある反応)な言動までなされました。恐怖感・威圧感を感じているのは私なんです。どうしてこんな酷いことを言われないといけないのか、これが上場企業であり社会的影響力の大きい電通のコンプライアンス、ガバナンスのあり方なのかと問いたいです。

夜部会事件からの学び
夜部会事件直後は翌週からの福岡出張やプレゼンなども控えていて普段でも激務なのにそれ以上に激務でずっと激務が続くので、仕事への責任感から仕事を放り投げて法務や人事に相談したりすることが出来ませんでした。ただ、令和の時代になっても酷い対応だったのでもし当時相談していたとしたらもっと怖いことをされたり社内で仕事を干されたりしたと思います。そういう意味では、当時の自分が仕事を優先した選択は今振り返ってみても正しかったと思うし、常に一生懸命に自分の仕事を全うしてきた自分を誇りに思います。
夜部会事件は育ってきた環境や受けてきた躾と教育、仕事の力量などが端的に現れていると思います。夜部会事件から、①教育と愛情を受けて育つことの大切さ、②20代までに成功体験を得ないと30代以降は厳しいということ、③教養などの文化資本が人の本質、ということを学びました。また、福沢諭吉先生の言葉と言われる心訓七則の内容は正しいということを痛感しました。【心訓七則:1.世の中で一番楽しく立派な事は、一生涯を貫く仕事を持つという事です。1.世の中で一番みじめな事は、人間として教養のない事です。1.世の中で一番さびしい事は、する仕事のない事です。1.世の中で一番みにくい事は、他人の生活をうらやむ事です。1.世の中で一番尊い事は、人の為に奉仕して決して恩にきせない事です。1.世の中で一番美しい事は、全ての物に愛情を持つ事です。1.世の中で一番悲しい事は、うそをつく事です。】
加害者達には鏡の中の自分の顔をしっかりと見つめて内省してみて欲しいです。加害者達が憎いとか大嫌いとか思っている対象は私ではなく他ならぬご自身であるという本質を捉えて欲しいです。電通には、正しいこと、つまり、書面による経緯説明と謝罪、私の名誉回復措置、加害者達と法務担当への厳正な処分、私の損害に対する補償、私への接触脅迫及び報復行為の禁止措置をして欲しいと思ってます。次の投稿で詳細をまとめますが、法務の稗方一司さんが私の自宅に4度も突撃されて本当に気色悪くて怖い思いをしてます。「メールや電話があるんだから家に来ないでください。怖いです。」と何度も伝えているんですが止めてくれません。電通の株主総会の日にも自宅突撃されました。
そして、若い世代の方々が夜部会事件から何かを学んで自分の命を守ってくれると嬉しいです。次回は夜部会事件後の詳細編です。